
このたび、2025年3月10日、聖路加国際大学大学院DNPコースを卒業いたしました。
思い返せば4年前。当時はCOVID-19が猛威を振るい、未知の感染症に立ち向かう日々を送っていました。COVID-19病棟で勤務していたため、家族のいる自宅には戻れず、東横INNから出勤し、東横INNに帰る生活を続けていました。狭いビジネスホテルの一室で、休日は溜まった大学課題や研究論文に向き合う日々。あの吐きそうなほどつらかった日々も、今では美しい思い出に変わっているのだから、人間の脳は不思議なものです。
実は、当初は聖路加国際大学のPhDコースに進学しました。しかし、臨床の現場にどっぷりと浸かっていた私にとって、PhDでの研究はどこかしっくりこない感覚がありました。「もっとリアルに、現場に貢献できる研究がしたい」「患者さんやスタッフに役立ち、現場が日々変わっていく姿を肌で感じたい」――そう強く思った私は、PhDからDNPコースへの進路変更を決意。大学にもご理解いただき、無事にDNPでの博士課程をスタートすることができました。

引用:(博士後期課程(看護学専攻 DNPコース)|聖路加国際大学 )
DNP(Doctor of Nursing Practice)コースの目的は、「博士号を持つ高度実践の変革者」の育成です。
現在までに聖路加国際大学DNPコースを卒業したのは26名、私はNP(診療看護師)として初の卒業生となりました。
私がDNPで取り組んだ実装研究は、 「看護師が行う超音波エコーを使用した末梢静脈カテーテル留置技術方法の教育プログラムの開発と実装」
英語では
“Development and Implementation of an Education Program for Peripheral Venous Catheter Insertion Technique Using Ultrasonography by Nurses”
と表現します。
この取り組みは、まさに看護技術における「守破離」だと考えています。 まず「守」で型を忠実に守り、「破」で型を理解したら工夫して発展させ、最後に「離」で型から離れ独自のスタイルを築く。これは茶道や武道の教えですが、技術を習得し、進化させていく本質そのものだと思います。
「ごめんなさい、あと1回だけ針を刺させてください」と謝るたび、患者さんの悲しそうな顔、切ない顔を何度も見てきました。皆さんも経験していることだと思います。しかし、エコーを活用することで、今まで何度も手足を刺され苦しんでいた患者さんが、1回の穿刺で済むようになる、単純なようでいて、これは本当にすごいことです。
現場を少しでも良くしたい・・・そのために、現場を変える力を学ぶ。それがDNPだと、私は思っています。
DNPでは、「普段行っていること」「疑問に思っていること」を題材に、誰にでもわかる根拠をもって研究を行います。良いケアを提供するためには、医師や多職種との協働が不可欠です。そのためにも、多職種に理解を得るための”見える根拠”を示していくことが大切なのです。これからもNPの役割を伝えるために、臨床の積み重ねをもとに、疑問や課題を研究という手法で発信していきたいと考えています。
現在、私は東京ベイの総合内科で8~10人の患者さんの入院から退院までを一貫して受け持ち、医師との2人チーム(Hospitalistチーム)でGIM‐NPとして新たな挑戦を続けています。今までは3から4名のチームで働いてきた私にとって2名チームはまさに相方の医師との連携が不可欠になります。でも、このシステムが上手くいけば、地方の医師不足の中でもある程度自律して働くことが出来るのではないかとChallengeしています。
NPになって14年。今もなお、毎日新しい知識を学び、経験を積み重ねる充実の日々です。若い頃、カナダの農家で牛の乳搾りをしていた時も楽しかった。3次病院の脳外科で汗まみれになって働いた時代も楽しかった。海外を放浪してジアルジア症にかかった時でさえ、今思えば貴重な楽しい経験でした。そして今日、この日も、臨床現場で刺激を受けながら働くことが出来る!楽しい毎日です。
結局、色々あるのは当たり前。人生は開けてみれば、素晴らしく楽しくて、ワクワクする”チョコレートボックス”みたいなもの――。開けてみないと中身はわからない!(映画『フォレスト・ガンプ』より)


